開催趣旨
SGEPSS波動分科会は、毎回、メイントピックを掲げて1件あたりの講演時間を長め(30分〜50分)にとって、じっくり議論を行う形態をとっております。今回は、「波動観測データ解析と将来の波動観測技術」というタイトルで、衛星・ロケット等による波動の観測・解析技術とその解析結果、ならびに将来の波動観測技術と期待されるサイエンスをはじめ、広く「波動」に関わる最新のサイエンスの話題を講演いただき、深く議論する予定です。
プログラム
3月8日(木)
13:00-13:10 開会の辞
13:10-14:00
三好由純(名古屋大学STE研)、笠羽 康正、小嶋 浩嗣、笠原 禎也、 熊本 篤志、松岡 彩子、ERG/PWEチーム、ERG/MGFチームSPRINT-B/ERG衛星で目指す内部磁気圏プラズマ波動観測の科学戦略について
内部磁気圏においてプラズマ総合観測を行うSPRINT-B/ERG衛星は、現在2015年の打ち上げを目指して準備が進められている。ERGプロジェクトのメインターゲットである放射線帯電子加速には、ULF帯/VLF帯のプラズマ波動が本質的な役割を果たしていることが考えられており、プラズマ波動観測がきわめて重要である。本発表では、内部磁気圏に生起する様々なプラズマ波動とそれらが放射線帯電子の輸送・加速・消失にどのように関わっているかをレビューし、SPRINT-B/ERG衛星でのプラズマ波動観測の科学戦略についての議論を行いたい。
14:00-14:50
小嶋 浩嗣(京都大学RISH)ERG衛星搭載プラズマ波動観測器(PWE)および波動粒子相関作用解析装置(WPIA)
ERG衛星に搭載されるプラズマ波動観測器(PWE)と、波動と粒子観測データの相関を機上で求める波動粒子相互作用解析装置(WPIA)について、現状の設計と観測計画の紹介をする。
14:50-15:20
松田 昇也(金沢大学)、笠原 禎也、後藤 由貴ERG衛星に向けた波動観測データの機上データ処理法の検討
科学衛星による自然波動観測では、CPU性能・メモリ容量・テレメトリ伝送速度など限られたリソース内で、機上処理ソフトが、どの処理にどれだけのリソースを割り当てるかが、非常に重要な検討項目である。本発表では、次期地球内部磁気圏観測衛星ERGをモデルに、従来の観測波形やパワースペクトルに加え、波動の位相情報を伝送する機上ソフトウェア処理について、許容され得るリソース内で実現可能な方法の検討結果を報告する。
(休憩)
15:40-16:20
大村 善治(京都大学RISH)Falling Tone Emisisonについて
16:20-17:00
小路 真史(京都大学RISH)、大村 善治EMICトリガード放射のシミュレーション
地球内部磁気圏の磁気赤道付近において近年観測された、電磁イオンサイクロトロン(EMIC)トリガード放射についてのシミュレーション結果について報告する。周波数上昇に伴って共鳴速度が変化するため、磁気赤道近傍におけるプロトンの速度分布関数が大きく歪められることを示した。また、分布関数変動の結果として新たに放射される別のEMIC波の励起機構や、トリガード放射の種類によるピッチ角散乱されるプロトンのエネルギーの違いについて議論する。
17:00-17:40
井町 智彦(金沢大学)、笠原 禎也、笠羽 康正、小嶋 浩嗣、 後藤 由貴、田村 悠輝、MMO-PWIチーム水星探査衛星 BepiColombo MMO 搭載 PWI 観測器の機上ソフトウェア処理
水星探査衛星 BepiColombo MMO に搭載されるプラズマ波動観測器 PWI に関する、機上ソフトウェア処理の概要を紹介する。
19:00- (予定) 懇親会:金沢市内にて(片町界隈。詳細は別途お知らせします)
研究会会場から懇親会会場までは、送迎バスを用意しております。懇親会参加希望の方は、人数確認のため、3月5日までに事務局までお知らせ下さい。
メールアドレスは下記のとおりです。
3月9日(金)
9:00-9:40
後藤 由貴(金沢大学)、笠原 禎也GPS-TECデータを用いた赤道域のGCPM電子密度モデルの補正
GPS-TECデータを用いて、地球周辺電子密度分布の経験モデルであるGCPMの誤差要因と補正法を研究している。今回は特に赤道域におけるGCPMとGPS-TECとのずれについて解析した結果を報告する。
9:40-10:20
鷲見 治一(アラバマ大学宇宙プラズマ及び大気研究センター)太陽圏外圏における磁気音波パルスによる高エネルギー粒子生成及び加速
MHDシミュレーション解析により、「惑星間空間衝撃波」が終端衝撃波に衝突することによりヘリオシース中に磁気音波パルスが生成され、この磁気音波パルスはヘリオシース中を外側へと伝播しヘリオポーズ近傍のプラズマシートで反射され内側へと向かい、終端衝撃波で再反射されることが明らかにされている。この磁気音波パルスがヘリオシース中の高エネルギー粒子加速及び生成の役割を担っていることを示すシミュレーション結果を最近得たので紹介したい。
(休憩)
10:35-11:15
松清 修一(九州大学)多イオン種プラズマ中のSPA波動の励起
多イオン種プラズマ中を磁力線方向に伝わる左回り円偏波には、Alfven速度を大きく超える位相速度を持つSuper Alfvenic (SPA)波動があることが知られている。SPA波動は多くの非平衡プラズマ分布に対して線形安定であるため、これまであまり注目されてこなかった。ここでは、SPA波の非線形励起過程を理論および粒子シミュレーションにより議論する。
11:15-11:55
篠原 育(JAXA/ISAS)、小嶋 浩嗣、長井 嗣信、藤本 正樹磁気圏尾部リコネクション領域磁気中性線近傍における波動観測
我々は、Geotail衛星が過去もっともX型磁気中性線に接近したと考えられる観測例について、プラズマ計測に比べて時間分解能の高い電磁場・プラズマ波動計測のデータをもちいて、磁場拡散領域内の波動の活動について解析を行った。その結果、もっとも磁場拡散領域に接近したと推定されている数秒間に対応して、波動の活動が極めて弱くなっていることを見いだした。この結果は、磁気圏尾部リコネクションの磁場拡散領域中で支配的な物理は乱れた電磁場による異常抵抗によるものではなく、無衝突リコネクション的なプロセスであることを示唆する。本講演では、上記の解析の詳細を示し、尾部リコネクションの磁場拡散領域の構造について議論を行う。
(昼食)
13:10-13:40
幅岸 俊宏(金沢大学)、森 晋作、八木谷 聡、大村 善治、小嶋 浩嗣Geotail衛星観測に基づくコーラスエミッションの非線形成長特性の解析
Geotail衛星において地球磁気圏昼間側で観測されたコーラスエミッションに対して、非線形成長の観点から振幅及び周波数の時間変化を解析し、その特性を検証する。
13:40-14:10
津川 靖基(東北大学)月周辺のwhistler-mode波動について
Kaguya衛星によって月周辺で観測されたwhistler-mode波動の統計的描像から、スペクトル形成の条件と励起課程の推定を見据えた研究の進捗を紹介する。
(休憩)
14:20-14:50
遠藤 研(東北大学)、小野 高幸、熊本 篤志、佐藤 由佳、加藤 雄人、寺田 直樹S-520-26号機ロケット実験によるNEI・PWM観測の初期解析結果
WIND-II(Wind measurement for Ionized and Neutralatmospheric Dynamics study -II)キャンペーンは、高度80-300 kmで観測ロケット搭載機器によりその場観測を行うとともに、ロケットからリチウムを放出し地上からその共鳴散乱光を観測する、熱圏中性大気と電離圏プラズマの結合過程の解明を目的とした総合実験である。2012年1月12日午前5時51分、内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた観測ロケットS-520-26号機に、東北大のグループはインピーダンスプローブ(NEI)とプラズマ波動受信機(PWM)を搭載し、リチウム放出前は背景の電離圏電子密度プロファイル、リチウム放出後は放出によって引き起こされる電離圏擾乱時の電子密度とプラズマ波動を測定した。今回の発表では、主としてプラズマ波動観測の初期解析結果を報告する。
14:50-15:20
石坂 圭吾(富山県立大学)、深澤 達也、岡田 敏美、芦原 佑樹、阿部 琢美S-310-40号機による電離圏中の長波・中波帯電波観測
2011年12月19日にS-310-40号機観測ロケットが打ち上げられた.本ロケット観測では,夜間における電離圏下部領域の電波伝搬異常の原因を調査することが主目的である.本発表では,S-310-40号機で観測された長波・中波帯電波観測結果に ついて報告する.
15:20-15:50
高橋 健(金沢大学)、尾崎 光紀、八木谷 聡容量性結合型複共振サーチコイルの開発
科学衛星における交流磁界測定は通常サーチコイルを用いる。一般的なサーチコイルは、一つの共振点を持ち、その共振点で感度が最良となるという特徴があるため、広帯域化を困難にしている。本研究は複共振という現象に着目し、共振点を複数持つ複共振サーチコイルの開発を行う。