研究(Research)
当研究室では、人間の処理能力を超えて増大する情報を効率良く処理・伝達するデータ通信技術を研究し、各所に分散する情報をいかに伝達、相互参照するかという課題に取り組んでいます。 特に科学観測等で得られるデータは、一般に数値データ列のため、長大な数列を人間がそのまま見ても簡単に意味を理解できません。 このような数値データに内在する意味(ルール)を計算機の助けで見つけ出し、重要な情報を選択的に伝送・蓄積し、人間に伝えるための情報処理・データ通信・大規模データベースに関する技術を研究しています。
具体的な研究内容は下記のように大別できます。
(1) 高分解能計測データの高速データ処理技術の研究
高分解能なセンサで計測した大量データから、限られた計算機資源を使って、準リアルタイムに有用情報を選択や、情報圧縮処理を行ない、少ない伝送帯域でより多くの情報を伝送するためのしてソフトウェア技術を研究しています。特に制約が厳しい人工衛星搭載用の観測装置で利用可能な、自律的に動作する機上ソフトウェアへの応用を目指しています。
当研究室が開発を担当する衛星搭載ソフトウェア:
- 月探査衛星「かぐや(SELENE)」(2007〜2009年)搭載
LRS(月レーダーサウンダー)/WFC(波形捕捉器)サブシステム- ジオスペース探査衛星「あらせ(ERG)」(2016年打上げ, 運用中)搭載
PWE(プラズマ波動・電場観測器)- 水星磁気圏探査機「みお」(BepiColombo/MMO)(2018年打上げ, 運用中)搭載
PWI(プラズマ波動観測器)- SS-520-3ロケット(2021年打上げ)搭載
LFAS(低周波波動解析システム)- 金沢大学衛星1号機「こよう」(2023年打上げ, 運用中)
機上・地上ソフトウェア群
金沢大学衛星プロジェクト(先端宇宙理工学研究センター)について
(2) 大規模科学データベースの高度情報処理法の研究
大量に蓄積された科学データベースについて、大容量データの高度な情報処理法を研究します。特に、従来は専門知識を有する人間にしか扱えなかったデータ中に隠された興味ある情報や知識を、計算機の力で効率的に抽出するアルゴリズムを研究しています。研究には当研究室が保有する数十テラバイトにおよぶ科学衛星による観測データなどを利用します。
(3) 電波を利用したリモートセンシング・逆問題解法の研究
GPS、レーダーなど電波の特性と通信・信号処理技術を駆使し、得られた計測データ(結果)から、ある数学モデルに基づき原因を推定する逆問題解法を研究しています。特に、きわめて多くのパラメータに支配される宇宙電磁環境や非可視媒質を、計測データを元に求める解法(非破壊検査手法)に取り組んでいます。
電磁波の伝搬解析手法 Ray Tracing (レイトレーシング) についてはこちら
(4) ネットワークを用いた大容量データの参照・配信技術の研究
各所に分散した大容量データを効率的に相互参照・配信する分散データベースシステム、データの閲覧・参照を統合的に制御する統一認証やセキュアな通信方式を研究しています。アカンサスポータルで現在利用されている本学の統合認証基盤や同ポータルを介した各種学内情報サービスの連携のしくみは、当研究室で研究・開発されたものです。